国道から山側へ入る道に案内看板がありません。坂は急で、道幅も広くありません。カーナビに入れるのは住所ではなく座標(およそ北緯26.671/東経128.126)のほうが確実です。
目印は、廃業したホテルの建物です。そこへ向かう標識をたどっていくと、手前に展望台が現れます。
大宜味村の押川。山の上にコンクリートのテーブルと椅子、東屋があるだけの、素っ気ない展望台です。
ただし、そこから見える範囲が違います。手前に塩屋湾、湾口に宮城島、島の北側に赤い塩屋大橋。左手に東シナ海、その先に本部半島と古宇利島。晴れていれば伊江島まで見えます。
見えるもの。宮城島は2つある
宮城島のところに注釈を入れました。沖縄で「宮城島」といえば、ふつうはうるま市の海中道路の先にある島を指します。ここから見えるのは、塩屋湾の湾口にある大宜味村の宮城島です。
島の北側と南側を沖縄本島に挟まれた、ふさぎかけの湾のような地形。この島の北に架かっているのが塩屋大橋です。1963年に開通したときは銀色のアーチ橋で、のちに赤く塗り替えられて地元で「赤橋」と呼ばれました。いまの橋は1999年に架け替えられたものです。
島も湾も、2016年にやんばる国立公園に移りました。それまでは沖縄海岸国定公園の一部でした。
塩屋湾が八景に入った年
「塩屋湾は沖縄八景のひとつ」という説明はあちこちで見かけますが、どの八景なのかまで書いているところは、あまりありません。調べたら特定できました。
1952年、琉球新報が創刊7周年を記念して読者投票で選んだ「新沖縄八景」です。その年の8月24日に募集を始め、9月下旬に締め切り、10月5日に発表されました。塩屋湾はその8か所のうちのひとつです。
戦後7年目の沖縄で、県民が投票して選んだ景色。展望台に立って見ているのは、そのときの人たちが選んだ眺めと、ほぼ同じものです。
ちなみに、戦前にも別系統の八景があります。1933年の「南沖縄八景」は首里・那覇・島尻・中頭だけが対象なので塩屋は入っていませんが、1936年の「沖縄八勝」には入っています。塩屋湾は戦前から選ばれ続けている景色です。
コブラ会の撮影地というのは本当か
本当です。裏づけは琉球新報の2021年1月11日のコラム「金口木舌」。Netflixの『コブラ会』シーズン3で、ダニエルが塩屋湾を望む六田原展望台に立つ場面に触れています。
ただし、ここからが大事なところです。「シーズン3の沖縄パートはここで撮られた」と書くと言い過ぎになります。実際は3つの層に分かれています。
シリーズが実際に沖縄でロケをしたのは、映画版がハワイ撮影だったことへの意識があったからだと言われています。俳優2人だけを2日間送り込んで撮ったうちの1か所が、この展望台でした。
なお、大宜味村と観光協会の公式サイトに「コブラ会のロケ地」という表明はありません。ロケ地として売り出されている場所ではないので、記念碑もパネルもありません。何もない山の上に、あの景色があるだけです。
すぐ近くに「大宜味スカイテラス」というレストランが2021年9月にできています。ランチは11:30から14:30。展望台に売店の類はないので、食事を挟むならこちらです。
基本情報とアクセス
展望台のあった場所には、かつてリゾートホテルがありました。1986年に開業し、80室ほどとコテージ、プール、テニスコートを備えていましたが、2000年ごろに閉業しています。展望台はそのホテルに併設されていたものです。いまも解体されきらない建物が残っています。
夜や早朝に女性ひとりで行くのは、あまりおすすめしません。人がいない場所で、街灯もありません。
近くは結の浜公園と大宜味シークヮーサーパーク。北へ進めば芭蕉布会館と喜如嘉の七滝があります。全体の回り方はやんばるの歩き方にまとめてあります。
よくある質問
いまも入れますか?
入れます。閉鎖や立入禁止の情報はありません。ただし整備は行き届いておらず、草木が伸びていると沖縄観光コンベンションビューローのフィルムオフィスも記載しています。2026年1月の訪問記録もあります。
コブラ会のロケ地というのは本当ですか?
本当です。琉球新報の2021年1月11日のコラム「金口木舌」が、Netflix『コブラ会』シーズン3でダニエルが塩屋湾を望む六田原展望台に立つ場面に触れています。ただしシーズン3の沖縄の場面がすべてここで撮られたわけではなく、屋外の絶景シーンだけが実際に沖縄で撮影されました。
駐車場はありますか?
駐車スペースはありますが、整備された駐車場ではありません。台数は情報源によって食い違い、「路上駐車になる」と書いている記録もあります。無料です。ほかの車や作業車の通行を塞がない位置に停めてください。
道は分かりやすいですか?
分かりにくいです。案内看板が出ておらず、国道から急な坂を登ります。目印になるのは廃業したホテルの建物です。カーナビには住所ではなく座標(およそ北緯26.671/東経128.126)を入れるほうが確実です。
桜はいつ咲きますか?
展望台へ登る道沿いに寒緋桜があり、1月下旬から2月上旬が見ごろとされています。大宜味村に桜まつりのようなイベントはないので、人出を気にせず見られます。本部の八重岳や名護城の混雑を避けたい人には向いています。
見える宮城島はうるま市の島ですか?
別の島です。ここから見えるのは塩屋湾の湾口にある大宜味村の宮城島で、うるま市の海中道路の先にある宮城島とは違います。島の北側に塩屋大橋が架かっています。
トイレはありますか?
あるという記述もありますが、整備状況が読めないので、あてにしないほうがいいです。手前の道の駅おおぎみか、シークヮーサーパークで済ませておいてください。
まとめ
整備されていない、看板もない、駐車場もろくにない。それでも、やんばるで景色を見るならここです。
1952年に県民の投票で選ばれた景色が、70年以上たっても同じ形で残っていて、観光地として作り込まれないまま置かれている。訪ねてみると、その放っておかれ方がむしろ良く感じられます。
滞在は15分もあれば十分です。シークヮーサーパークや芭蕉布会館と組み合わせて、大宜味村を半日で回るのがちょうどいい配分だと思います。
確認した情報源を見る(2026年8月10日確認)
琉球新報 2021年1月11日「金口木舌」(Netflix『コブラ会』シーズン3で、塩屋湾を望む六田原展望台にダニエルが立つ場面への言及。掲載日と本文を確認)/国立国会図書館 レファレンス協同データベース 事例1000249458(回答館:沖縄県立図書館。1952年に琉球新報が創刊7周年記念として読者投票で選定した「新沖縄八景」に塩屋湾が含まれること、募集開始8月24日・発表10月5日。典拠は琉球新報1952年7月〜12月および『沖縄大百科事典』)/同 事例1000327916(1933年「南沖縄八景」と1936年「沖縄八勝」)/沖縄観光コンベンションビューロー 沖縄フィルムオフィスのロケ地データベース(展望台からの眺望、整備が行き届かず草木が伸びていること、廃業したホテルへの標識が目印であること、那覇から約120分)/Stripes Okinawa 2026年1月18日(現地訪問記。座標、コブラ会ファンの来訪、周辺のレストラン)/Wikipedia「宮城島(沖縄県大宜味村)」(島の位置、塩屋大橋の開通1963年と架け替え1999年、2016年のやんばる国立公園への移管)/大宜味村公式サイトのイベント一覧と、おきなわ物語の桜まつり情報(大宜味村に桜まつりの開催がないこと)。駐車場の台数、トイレの現況、正式な地番、ホテルの名称と開閉業年は確認できていません。ホテルについては複数の記録が一致する範囲だけを書いています。

